飛行機事故に遭う確率は「非常に低い」とよく言われますが、2025年は大きな事故が相次ぎ、死者数だけを見ると例年より多い年になりました。
ここでは、IATA(国際航空運送協会)とASN(Aviation Safety Network)という二つの統計データを元に、2025年の飛行機事故に遭う確率を整理します。
統計1:全事故に遭う確率 約0.00013%(IATAデータ)
IATAが2026年3月に発表した「2025 Annual Safety Report」によると、2025年の全事故率は100万便あたり1.32件(1件の事故につき759,646便に1回)でした。2024年の1.42件からは改善したものの、2021〜2025年の5年平均(1.27)はわずかに上回っています。
- 事故件数:51件(全38,700,000便中)
- 事故に遭遇する確率:約0.00013%(51 ÷ 38,700,000)
IATA Releases 2025 Safety Report
統計2:死亡事故に遭う確率 約0.0000207%(IATAデータ)
2025年の死亡事故は8件で、2024年の7件、5年平均の6件を上回りました。機内での死者数は394人にのぼり、2024年の244人、5年平均の198人を大きく超えています。
- 死亡事故件数:8件(全38,700,000便中)
- 死亡事故に遭遇する確率:約0.0000207%(8 ÷ 38,700,000)
- 参考:2024年の同確率は約0.0000172%(7 ÷ 40,600,000)
IATA Releases 2025 Safety Report
統計3:死亡事故に遭う確率 約0.0000308%(ASN/Flight Safety Foundationデータ)
ASNのデータを元にFlight Safety Foundationがまとめた「2025 Safety Report」(2026年2月発表)では、IATAより広い範囲(貨物機や非定期便も含む、14人以上乗せられる認証を受けた全機材)を対象に統計を取っています。
- 全事故件数:101件(2024年の140件から28%減)
- 死亡事故件数:12件(2024年は15件)
- 死者数:453人(乗客・乗員420人+地上33人)※2024年は271人(268人+3人)
全世界の年間便数をIATAの推計値に近い約3,900万便と仮定すると、
- 死亡事故に遭遇する確率:約0.0000308%(12 ÷ 39,000,000)
2025 Safety Report – Flight Safety Foundation (PDF)
IATAとASN、なぜ数字が違うのか
| IATA | ASN(FSF) | |
|---|---|---|
| 対象範囲 | 主に加盟航空会社の定期便中心 | 14人以上の全機材(貨物・非定期便含む) |
| 2025年 全事故件数 | 51件 | 101件 |
| 2025年 死亡事故件数 | 8件 | 12件 |
| 2025年 死者数 | 394人(機内のみ) | 453人(機内420人+地上33人) |
| 死亡事故に遭う確率 | 約0.0000207% | 約0.0000308% |
「どちらが正しい」というより、集計対象の広さの違いです。
ASNの方が貨物機や小規模な非定期便まで含むため、件数・確率とも高めに出ます。
なぜ2025年は死者数が多かったのか
2025年の死者数が突出した背景には、2つの大事故があります。
- 2025年1月29日:米ワシントンD.C.で、旅客機(PSA航空のCRJ)と米軍のヘリコプターが空中衝突。乗客乗員64名とヘリ搭乗員3名の計67名が死亡
- 2025年6月12日:インドのアーメダバードで、エア・インディアのボーイング787が離陸直後に墜落。搭乗者242名中241名と地上の19名が死亡。生存者はわずか1名
この2件だけで、IATA基準の機内死者394人のうち77%以上を占めています。裏を返せば、この2件がなければ2025年も例年並みの「安全な年」だったとも言えます。
さらに広い集計(自家用機やビジネスジェットなども含む)では、2025年の航空事故による死者数は548人(Forbes報道、ASNデータ引用)にのぼり、2018年(ボーイング737MAXの初の墜落事故を含む962人の年)以来最多となりました。
Aviation Fatalities Hit 7-Year High In 2025, Per Aviation Safety Network – Forbes
2025年のまとめ
数字だけを見ると2025年は「危険な年」に見えますが、実態は少数の大事故が統計全体を押し上げたことが理由であり、飛行機の安全性の長期トレンドは依然として改善傾向にあります。
IATAによれば、2012〜2016年の5年平均では致死事故が350万便に1回だったのに対し、2021〜2025年の5年平均では560万便に1回にまで改善しています。

