イルミナの次世代シークエンスに出てくる用語【Form 10Kに出てくる技術・原理を簡単に解説】

イルミナは、いきものの設計図である「DNA配列」を大量かつ高速で読むことのできる機械「次世代シーケンサー」を売る会社です。

Form 10-K(米国証券取引委員会が要求する年次報告書)を見るとフローセルマイクロアレイライブラリーといった専門用語が出てきます。

Most of our product sales consist of instruments and consumables, which include reagents, flow cells, and microarrays, based on our proprietary technologies. We also perform various services for our customers.

Form 10-K Our Principal Products, Services, and Technologies

We have developed various library preparation and sequencing kits to simplify workflows and accelerate analysis

Form 10-K Consumables

この記事では、分かりそうで分からないイルミナのマニアックな専門用語を解説します。

マイクロアレイについては別記事で紹介します。

次世代シーケンサーの専門用語【基礎編】

次世代シーケンスの【超簡略化原理】

ものすごくざっくり原理を説明すると、以下のようになります。

  1. 調べたいゲノムやDNA配列を適切なサイズに断片化する
  2. 断片化したDNA配列を読む
  3. 読まれた「断片」のどこがつながっているのかを「再構築する」or どんな「断片」が多いかを計算する

シーケンスは「Run」するもの

サンプルをシーケンスにかけることを「シーケンスを走らせる」とか「Runする」といいます。

「1ランのコストはいくらくらいで…」というようにも使います。

フローセル

シーケンスするサンプルを具体的に「シーケンスマシン」にかけるための特殊な「ガラス基板」のことです。

適切な処理をした「サンプル(液体)」をロードできる場所が8箇所(8レーン)あります。

8レーンあるということは、単純計算で「8種類」のサンプルを一度に流す事ができるの?

実際には「1レーン」中でも、別々のサンプルを流す事ができます。

サンプルごとに、特殊なラベルをつけることで、同じレーンに流してもお互いを区別できるのです。

また、フローセルも一度に2枚まで、機械にかける事が可能です。

ライブラリー調製キット

図書館…?

シーケンスを行うために、配列を読みたいサンプル(DNA配列等)を特殊な処理で加工する必要があります。

マルチプレックス

上の補足になりますが「一度にたくさんのサンプルをRunすること」を「マルチプレックス法」と呼びます。

マルチプレックス法とは、1回の実験で多数のサンプルを同時にシーケンス解析を行う手法です。この手法にはバーコードの配列が各サンプルに付加され、データ解析時にそのバーコードに応じてサンプルごとの解析を行います。

次世代シーケンサーへようこそ!

ハイスループット

スループットは「単位時間に処理できる量」のことです。

「ハイスループット」とは、サンプルの種類にかかわらず、とにかく「サンプル」として流されたものを一度に「大量に」処理できる、という事です。

「たくさん処理できる」ことの何がいいの?

「サンプル」と読んでいますが、元はDNA配列やRNA配列(だったもの)です。

たとえばヒトゲノムであれば、そのDNA配列は「膨大」です。

加えて(断片化して調べた)その膨大な配列は「たった一度でも読めればいい」というわけではありません。

なぜなら、調べたいDNA配列を断片化したあと「読みそびれ」が内容に適切な「増幅処理」を行います。

「たまたまあって読まれた」のではない「確かな」配列であるひつようがあるため、同じDNA断片(に由来する増幅された配列)を「何度も」読む必要があります。

そのため「読む」という行為がたくさんできる、つまりハイスループットであればあるほど、評価する際の精度が上がります。

イルミナの収益は主にシーケンサーの「消耗品」から

イルミナ社のForm 10Kには、2017年から2019年までの収益の割合について以下のように書かれています。

  • シーケンサー類、本体の売り上げ 15%-19%
  • 消耗品 68%-64%
  • サービス他 17%-18%

研究者や研究試薬を扱う業者から「イルミナは消耗品で儲けている」という噂を聞いた事はありましたが、数値上でも本当でした。

いろいろあるシーケンサー

2019年の資料には以下のような種類のシーケンサーがあります。

一度に読める「DNA配列の量」がそれぞれ違います。



シーケンサーのお値段の例

シーケンサーは代償様々なものがありますが、一般的に

一台で数千万円規模

のお値段です。

NovaSeqには2つのモデルが用意されている ― 85万ドルのNovaSeq 5000と、98万5000ドルのNovaSeq 6000だ。

かつては27億ドルだった費用が今や100ドル ― ゲノム解析のIlluminaが新製品を発表

あまりにも高いので「もっと手軽に」を叶えたMiniSeq(ミニセック)というのも売られています。


2016年時価格例(税別)

出典:新製品ウェビナー (イルミナ株式会社 プロダクトマーケティング部)


ちなみに、そのほかの機器はそれぞれ、NovaSeq(ノバセック)、MiSeq(マイセック)、NextSeq(ネクストセック)と呼びます。

消耗品はずっと使う上に意外と高い

とはいえ、シーケンサーは一度買ったらしばらくは使えるわけで、毎年買い換えるようなタイプの機会ではありません。

シーケンス機器自体はもちろん高額なのですが、シーケンスに必要な消耗品は

シーケンス機器を使い続ける限り必須

です。

以下、ざっくりとシーケンスに必要な消耗品です。

  1. シーケンサーで「読める」形にサンプルを整えるための専用試薬
  2. シーケンサーにロードするための「フローセル」
  3. サンプルを整えるのに必要なその他、一般的な試薬

2はイルミナから買う以外に選択肢のない専用試薬です。

一方で「ライブラリー調製試薬」「ライブラリー調製キット」と呼ばれる1は少し安めの価格で「NEB」という会社から買うこともできます。

しかし、いろいろな理由で純正品のイルミナのライブラリー調製キットを買う方が良い場合もあるので、結果、1の消耗品は売れ続けます。

なお、ライブラリー作成中に「エタノール」などの一般的な試薬が必要になりますが、それらはイルミナから買うことはありません(というより取り扱っていないはずです)。

イルミナのシーケンサーは世界に15,000台以上ある

イルミナ次世代シーケンサーは全世界で15,000台以上の導入実績
(〜2019年末)

イルミナ株式会社オンラインセミナー 2020年5月 
2020年1月JP Morganカンファレンスでの発表より

一台一台が高額な機械である上に、消耗品もそれなりに高額です。

さらに、機械によっては保守点検期間が終了する場合もあるので、上位機種に買い換える必要もあります。

有名な(世界中での研究機関でよく使われている)Hiseq(ハイセック)シリーズはもうすぐ終了する事が知られています。

The HiSeq 2500 System has been obsolesced. We intend to continue to provide full support of the instrument and supply the reagents through February 28th, 2023.

Illumina HP

イルミナのシーケンサーと消耗品はまだまだ、買われ続けそうです。

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