飛行機は上空1万メートル前後を飛んでいます。もし、その窓が割れてしまったら…?
滅多に起きることではありませんが、実際に何度か起きている事故でもあります。
ここでは、その時に何が起こるのかを物理的な仕組みから整理し、実際の事故例を見ていきます。

物理のシミュレーション動画もあるよ
なぜ危険なのか? 急減圧の仕組み
飛行機は高高度を飛ぶ際、機内を地上に近い気圧まで人工的に加圧しています。
外の気圧は非常に低いため、機内と機外の間には大きな気圧差が生まれています。
窓が割れると、この気圧差を解消しようとして機内の空気が破損箇所から一気に噴き出します。
これが「急減圧」と呼ばれる現象で、主に次のようなことが起こります。
- 強烈な吸引力:破損箇所の近くにいる人や物が、外へ引っ張られる力を受ける
- 気温の急低下:外気温はマイナス50℃前後になることもある
- 酸素不足:気圧の低下で酸素が薄くなり、意識を保てる時間が急激に短くなる
- 爆音とホワイトノイズ:空気が高速で流れ込む音で、会話やアナウンスがほぼ聞こえなくなる
このためパイロットは直ちに緊急降下を行い、酸素マスクなしでも呼吸できる高度(有効高度)まで下げてから、最寄りの空港へ緊急着陸します。

酸素マスクは約10-20分ほど使えます(よく引用されるのは12〜15分)。米国の規則で「有効高度(約1万フィート=約3,000m)まで10分以内に降下する」ことが基準になっているためです。
実際に起きた事故
ブリティッシュ・エアウェイズ5390便(1990年6月10日)
整備の際、規格より小さいボルトでコックピットの窓が固定されていたことが原因で、上昇中に操縦席側の風防が枠から外れました。機長は体の上半分が機外に吸い出されてしまいましたが、客室乗務員が脚をつかんで支え、副操縦士が一人で操縦を続けて緊急着陸。乗員乗客87名全員が生還し、機長も半年後には職務に復帰しています。
サウスウエスト航空1380便(2018年4月17日)
エンジンのファンブレードが金属疲労で破断し、飛び散った破片が客席の窓を直撃して破損。急減圧により窓側の女性乗客が体を半分ほど機外に吸い出され、周囲の乗客が引き戻そうとしましたが、死亡が確認されました。米国の定期便としては2009年以来初めての死亡事故となりました。
四川航空8633便(2018年5月)
巡航中に操縦席の風防ガラスが突然吹き飛ぶという、ブリティッシュ・エアウェイズ5390便とよく似た事故が発生。副操縦士が体を半分機外に出しながらも、機長が手動操縦で緊急着陸に成功し、死者は出ませんでした。この事故は映画化もされています。
ライアンエア機の窓破損事故(2026年7月)
ギリシャのテッサロニキからドイツ・メミンゲン行きの便(ボーイング737)で、離陸後にエンジンのファンブレードが破断。破片が機体側面に激突し、客席の窓が破損して急減圧が発生しました。窓側の男性乗客が体を半分ほど機外に吸い出されましたが、3列後ろに座っていた妻が駆けつけて夫をつかみ、周囲の乗客の助けもあって約2分後に機内に引き戻すことに成功。飛行機はテッサロニキに引き返し、無事着陸しました。
まとめ ― 何が生死を分けるのか
4つの事故に共通して生死を分けた点は、
破損箇所のすぐそばにいたかどうか、そしてシートベルトを締めていたかどうか
という点でした。
ブリティッシュ・エアウェイズ機や四川航空機のケースでは、機体を制御し続けたもう一人の操縦士の存在も生還の大きな要因です。
窓破損自体はごく稀な事象ですが、起きた際の乗客の行動――特にシートベルトの着用と、急な物音の際にすぐ従うこと――が、被害の大きさを左右することがこれらの事故から見えてきます。

