オーストラリアでは、2019年9月から各地で大規模な森林火災(山火事)が起こり、深刻な被害がもたらされました。
ひどい状況が続きましたが、2020年2月13日頃、オーストラリア東部ニューサウスウェールズ州では、半年ぶりに「森林火災が制御可能な範囲に留まった」事を宣言することができました。
目次
2020年1月7日までの被害状況
- 消失面積:500万ヘクタール(九州+四国に相当する面積)
- 死者:少なくとも24人
- 家屋の消失:少なくとも1200軒以上
- 動物への被害:8000頭のコアラを含む5億匹近くの動物が犠牲となった見込み
(資料:AP通信他)
火災により首都キャンベラでは大気汚染が悪化し、世界で最悪の水準に達しています。
被害や詳細のビジュアルデータ
Googleが提供するGoogle Crisis Mapでは、火災の起こっている地域をリアルタイムで見ることができます。
また、この森林火災の詳細について、視覚的に把握できるデータや写真がBBCで紹介されています。以下の図はその一例です。
Australia fires: A visual guide to the bushfire crisis
何故山火事が起こるのか?
燃えやすい条件が整っている
オーストラリアの夏は気温が高く、乾燥した気候から、干ばつがよく起こります。
また、オーストラリアの植生はユーカリ、ティーツリーなど「油」が取れることで有名な樹木が豊富です。葉に油分が含まれているのです。
気温が高く、雨が降らず、可燃物(樹木)と発火材(油)がある。
つまり、一旦火が起こってしまうと「燃えやすい環境」が整っているのです。
木にくっついている剥がれた樹皮に火が付くと、風に乗って30 km先まで火種として運ばれてしまいます。こうした小さな火種を制御するのは不可能です。
最初の火種は何なのか?
一部地域では山火事は通年で起こりますが、出火原因の多くは
- 落雷
- 太陽光の収斂(ガラスの破片に光が集まって枯葉が着火する)
- 摩擦(摩擦熱、静電気)
- 放火(故意ではない)
などによる自然現象(=自然発火)とされています。
火源がなくとも勝手に発火する最低温度を発火点と言います。木材の発火点は250~260度ですし、ユーカリに含まれるテルペン(油成分)の発火点も200度を超えます。
つまり「ユーカリが熱せられて火を放ち火種になる」というよりは「火がついたときに燃え広がりやすい状態をつくってしまう」と考える方が自然です。テルペンの引火点は非常に低く35度で引火します。
私がBBCの記事やWikipedia含むその他の資料を調べた感じでは、少なくとも「ユーカリが勝手に発火する」ことを支持する資料は見つかりませんでしたが、もし「ユーカリ自然発火」の証拠があったらぜひ教えてください。
(参考資料)
Australia fires: Have gum trees made the bushfires worse?
Bushfires in Australia 【日本語:オーストラリアの森林火災】
そして、残念ながら、放火や人為的な理由(タバコなどのポイ捨て、マッチを落とすも含む)が火事の原因になることも多く、火事原因の75%が放火であるという報道もあります。
Australia fires: Is arson to blame?
また、Government of New South Walesの報告によると、2019年〜2020年にかけて放火や、不注意あるいは危険な行為を行った者180人に対し、警察が法的な対応をとったとのことです。
そんなに多くの人が対象になるとは、驚くべきことです。
今年は何故、ことさら酷い山火事となったのか?
2017年はオーストラリアの多くの地域で、平年より乾燥が酷く、翌年2018年はオーストラリア南西部の殆どで年間の雨量が10%以下という歴史的記録を出していました。大干ばつが起こっていたのです。
これに2019年の記録的な高温と少雨が重なり、各地で大規模な火事が発生したようです。
以下の図は、オーストラリア各地域の年間平均気温の推移を表しています。
近年、気温が非常に高くなっていることが伺えます。
(オーストラリア政府資料より)
支援の動き
スコット・モリソン豪首相は、今回の火災で家や職を失った人を援助する復興局の設置を発表し、支援学として少なくとも20億(豪)ドルを計上しています。
また、アスリートやアーティストなど、有名人が募金や支援を呼びかけるなどして、多くの募金が集まったことも記憶に新しいです。支援の現状、必要なものについてBBCが記事を公開しています。
オーストラリア森林火災、世界はどんな援助を? 何が必要?いらない援助とは?(2020年1月8日BBC)
鎮火後の洪水
2020年2月6日、恵みの雨がようやく降り始めました。
この雨のおかげで各地の森林火災が次々に鎮火していきました。
しかし、2月6日から9日までの4日間の降水量は、1990年以来最大の391.6ミリに達しました。
ニューサウスウェールズ州では、洪水の発生に伴い、一部地域の住民が避難を余儀なくされたり、50校以上の学校が休校になるなどしました。