2015年3月24日、副機長が「意図的に飛行機を墜落させた」と思われる事故が起こりました。
ドイツのLCCのGermanwings(ジャーマンウィングス)が運行するエアバス320で起こった悲劇です。
乗客は衝突の直前までその事態に気がつくこともなかったようです…
バルセロナ発デュッセルドルフ行きの9525便は、午前10時ころに離陸後、順調に巡航高度まで上昇しました。
しかし、機長がトイレにたった隙に、副機長が操縦室に内側から鍵をかけ、意図的にアルプス山中に墜落させてしまいました。
トイレから戻ろうとした際に異常に気が付いた機長は、懸命にコックピットに戻ろうとし、斧で扉を破壊しようと試みた形跡もあったそうです。
しかしながら、コックピットからの反応は一切なく、墜落に至るまで「完全な静寂」が保たれていたそうです。
うすら恐ろしいです…
機体は全速力に近い時速430マイル(時速692km)で墜落。その残骸は山肌に深く食いみ、遺体や瓦礫は粉々に破壊されました。
フライトレーダー24による事故機の軌跡
以下は、離陸後の時系列です。
午前10時1分 離陸
午前10時27分 機体は巡航高度の1万1600メートルに到達
(機長がトイレに行くため離席)
午前10時29分 降下を開始(副操縦士の独断)
午前10時40分 機体が山腹に衝突
同機は高度約1万~1万2000メートルから2000メートルまで徐々に降下したため、乗客は事態に気づいていなかったとみられる。「犠牲者らは、最後の瞬間になって初めて気がついたと思う。悲鳴が聞こえたのは、衝突の直前だった」という。
AFP BB newより
事故機を操縦していたのは、アンドレアス・ルビッツ副操縦士でした。
テロだったんでしょうか?
最終報告書では、高高度での減圧により意識がなくなった等「事故路線」の可能性を退け、副操縦士の自殺と結論づけています。
テロではなかったとしています。
本人宅への捜査や、友人・家族への聞き取り調査を経て、本人が事故以前に「燃え尽き症候群」のような状態であったことが判明しました。
アンドレアス副操縦士は「薄給」「仕事のプレッシャー」等で悩み、精神科を受診していたこともわかりました。
また、重度のうつの病歴もあった他、「職務不適格」とした眼科医の診断書が破られた状態で見つかったとの報告もあります。
また、墜落機の直前の便で「降下のリハーサル」をしていたことも報じられています。
ルビッツ副操縦士がデュッセルドルフ発バルセロナ行きの便で「航空術上の理由が一切ない制御された降下を約1分にわたり」試していたようだと伝えていた。
AFP BB news
突発的なアイディアではなく、計画的な犯行だったんですね…。
今回の事故を受けて、事故捜査当局は現行の体制についての勧告を行なっています。
多くの人を巻き込んで自殺するような人がなぜ副操縦士として勤務できたのか?という点には批判が起こりました。
- コックピットには常に二人以上の乗務員を配置(欧州の航空会社)
- 精神疾患を持つ操縦士の医療情報に関する守秘義務を解除(勧告)
さすがに「フライトデッキのドアは操縦室の操縦士にしか開けられない」という点についての勧告は避けられました。テロなどへの安全面を考えると、難しい問題です。
ジャーマンウィングスはルフトハンザ子会社のLCCでしたが、現在は、同ルフトハンザ子会社のユーロウイングスと統合しています。
日本でも同様の事件が過去に起こっています。
日本航空350便墜落事故
1982年(昭和57年)2月9日に日本航空のダグラス DC-8-61型機が羽田空港沖に墜落した航空事故である。350便は福岡空港発東京国際空港行の定期便で、乗員乗客174人中24人が死亡し149人が負傷した
wikipedia
この事故では、機長が着陸体制での飛行中にエンジンの「逆噴射」を意図的に行い、機体は失速、東京湾に墜落しました。
この時も操縦士である機長に精神疾患があったことがその後の調査で明らかになっています。
再発を防げるような、合理的な仕組みづくりが行われることを願わずにはいられません。